交通システムの計画や交通需要などから、道の広さなどの規格が決まってきます。
しかし、そのような裏づけのみで道が形成されてしまうことが多く、道の計画地に差し掛かった歴史ある建物や樹木がバッサバッサ破壊される、伐採されてしまうことが当たり前のようにされているところも多い状況です。
まちの景観に趣をもつ自治体や文化を大切にする自治体などでは、計画において、既存の重要な文化財やまちの資源(歴史ある建物や大木など)に差し掛かる場合は、それらを避ける形で計画することや、資源を代替する、移動することにより、代々大切にされてきたものを、破壊することなく残す機運があります。
高速道路の計画においても、山間部等に道を通す場合、本来は直線的に、山を切り崩したりして道路を通すのが、交通の観点からすると効率はいいのですが、道路計画を優先するあまりに、既存の自然や文化、生活の営みを破壊することはあってはならないのです。
ランドスケープの考えにおいては、まず、道路を直線的に計画したときに問題が起こることが予測される、わかっている場合の対処法として、①道路を迂回させる「回避」、②道路機能を優先させなくてはいけないときは、環境、生態系等の被害を極力少なくする「低減」、③道路機能を最優先させることで、資源への影響が多大にでてしまうときは、同等機能で置き換える「代替」という手段を講じて、資源や自然を大切にする考えが持たれつつあります。
これらの考えのことを、エコロード(和製英語) とも呼びます。
都市計画の分野においても、ペーロケでまっさらな状況で考えるのと、既存の町の文化や歴史資源を加味して考えるのとでは、土地の風景を形成する上でも、その土地の趣や歴史内容の濃さが大分変わってきます。
道路拡幅の計画においても、資源を大切にしながら計画された箇所は、往時の面影を残しつつあるので、それがランドマークともなり道路空間の質も向上します。
諏訪神社前の大木:ある意味ランドマーク的存在 |
山形駅~山形県庁までの道路拡幅事業において、自分が学生時代(10年前)から、いろいろと問題になっていた寺社の大木を残す、残さないの問題も、道路機能は維持しつつも大木を守り、道の景観としても活用、うまく溶け込ませた空間が出来ていたことに、非常に良かったと感銘を受けました。
歩道空間に、緑、景観という要素がより注ぎ込まれています。 |
一部伐採した幹は、ベンチ代わり?に活用 |
石のベンチよりは、この場を示す、意味するものとしてもいい。 |
通常、木は雨にあたると(水の吸収、乾燥の繰り返し)腐るのですが、腐らないような加工がされています。 |
よく見ると、年輪について年数が明記。学習にもつながります。 |
あまり、歴史、文化等に趣を持たない自治体でしたら、間違いなく残すことは出来なかったでしょう。
この事業を行うにあたり、いろんな立場の方々が長い期間議論と検討を繰り返したのだろうと思います。
木陰空間が少ないと言われる歩道上に、しっかり木陰空間を形成。夏場はいいですね。 |
土木的な発想だけでなく、まちの形などを複合的に考えていくことができれば、同じ道づくりでも趣のある道路空間が出来、魅力ある都市空間の創造に寄与するものとなります。