「佐原のまち」
現在は「香取市」となってしまいましたが、平成の市町村合併以前は、「佐原市」でもあり、自分にとっても「さわら(佐原)」という響きの方がなじみ深い感じです。
自分は、となりの「おみがわ(小見川)」に住んでおりましたが、幼少のころ佐原へ行くということは周辺の町に住んでいた者にとってある意味楽しみでもありました。
(現在は、小見川も香取市の一部となり、同じ行政域となっております)
香取市体育館にて (佐原→香取の文字だけが新しい!!) |
地元(千葉県・香取市)の偉人として有名なのが、伊能 忠敬「いのう ただたか(ちゅうけい とも呼びます)」
測量で有名な偉人です。
この連休においては、香取市体育館(佐原体育館)にて伊能図の公開がされておりましたので出かけてきました。
(JR成田線の佐原駅の北側にあります。そういえば昔、バドの大会で来た?記憶がうっすらと...)
体育館全体に日本地図(伊能図)が広げられています |
連休中ですが、平日ということで市内小学生がフィールドワーク的な勉強に来ておりました。
(ちょっとビックリ、自分の小学校時代の母校でもある、小見川東小学校の児童さんも来ていた模様!)
測量の仕組みの解説 |
海岸線が忠実に |
盛岡付近 |
仙台付近 |
栃木県(喜連川~氏家)付近 |
宇都宮付近 |
小田原付近 |
仙台付近の海岸線(今の日本地図とほとんど狂いがないのが凄い!) |
佐原で有名なのがもうひとつ、関東の三大小江戸とも呼ばれている、小野川沿いの佐原のまちなみ。
関東の三大小江戸とは、「佐原、川越、栃木」のこと。
歴史あるまちには伝統的なお祭りがあります |
関東の三大小江戸のポスター(山車会館にて) |
小野川沿いのまちなみは、重要伝統的建造物群保存地区に指定されており、街並み景観に力をいれている地区でもあります。
さわらの町並み案内サイン |
川沿いや街道筋のまちなみは、新しく直線的に整備されたまちなみと違い、変化があって飽きさせることがありません。ある意味、現代においては希少価値ともいえる大切なものです。
ところどころに目がいくような感じで、それぞれの町に存在している構成物(建物、道、植栽、川、意匠物、文化、交流活動など)が詰まっている感じがして魅力的な空間でもあります。
忠敬記念館は、伝建地区外ですが和風の建物をコンクリート造で表現 |
自分が幼少の頃(高度経済成長期)は、佐原の駅前のデパート(十字屋、清見屋)が栄えていた時期でした。その当時、小野川沿いは逆にあまり見向きもされないこともあったでしょう。
しかし、現在では逆に駅前よりも小野川沿いの景観の方が見直され、(伝建地区の指定とも重なり)観光客が訪れている感じです。
駅前のデパートは、(多くの地方都市の現状と同じで)郊外型店舗に客足が奪われ閑散としてきてしまいました。
自動車社会以前に出来た中心市街地の空間や街道筋などの町並みや空間は、自動車社会ではあまりなじまないことでしょう。しかし、電車などの公共交通手段で訪れる観光客にとっては歩いて移動できる町場空間として魅力的な場所となりつつあります。
東京や京都、あるいは地方都市に残っている路地空間と同じようなスケール感です。
忠敬旧宅(大震災により損壊、修復中です) |
小野川沿いの景観(枝垂れヤナギ) |
往時の建物様式が残され活用されています。 |
青いビニールシートは震災後に被せられたものです。(修復中です) |
街道筋も軒先が揃えられるなどの配慮がされています |
佐原三菱館です。(三菱銀行佐原支店がありました) |
雪国ではありませんが、景観を配慮して信号機は縦型です。 |
往時は舟運により商業が栄えておりました。 |
忠敬橋(アクセントに観測器具をモチーフにしたモニュメントも) |
川と町とが一体となった空間が構成されています |
往時の生活風景や文化を感じることができるのが、今の新しい都市にはないモノゴト。
さわら舟くだり(道の駅・水の郷さわらと往復できます) |
橋より水の放水もあります。 |
曲がりくねった道筋は、「奥に何があるのだろう」という見え隠れの効果もあり |
都市が成熟していくには、往時の空間と、新しい都市の空間がうまくすみ分け出来、お互いの空間が補完できるような体制を整えていかなくてはならないのだと思います。
中途半端に往時の空間に道だけ広げて、雰囲気を壊わしてしまうのも考えものです。
「残しておくべきもの」と「更新していくべきもの」をあらゆる視点から熟考していくことが都市を魅力的な空間にし、賑わいを取り戻していくためには必要なことです。
忠敬記念館入り口には測量の御用旗 |
「土木的な技術」と「都市空間を創造していく思考」を両立していかなければ中途半端なモノを生成してしまうことになります。
自分は、魅力的な都市空間を壊してまでゼロから新しいモノに更新してしまう考えには疑問を呈します。
いままで生活や商売をしてきた都市には、いろんな方が積み上げてきたモノゴトが詰まっています。
それは、建物や道だけの問題ではありません。
さわらの新しい観光拠点(道の駅水の郷さわら) 国道356号、利根川沿いにあります。 |
都市を魅力的な空間となっていくためには、空間の品質、空間を構成していくための様々な要素が絡み合って実現しているものです。
そして、いろんな方のご尽力により、このような空間が実現、残されています。
【これらを見て改めて思ったことは】(業界全体としての反省点)
これらの都市や地域のことは、建築、ランドスケープ、土木に関係する技術者として、忘れてはならない大切なモノゴトです。
社会のことや創造的なことも考えることができ、技術的なことも捉えることができるのが、その道のプロというものです。
いち業務についても、技術のほかに、そのことに携わる本質的なモノゴトを考えさせるような業務をしていかなくてはならない。もちろん、受発注者双方の問題意識も改革していかなくてはならない。
改めて「多角的にモノゴトを見ていくことがとても大切である」と感じたひとときでした。そして、単純に設計だけをこなしていくだけでは、技術を売りに押し出している組織としても、技術者としてもさみしいものがある と日々思います。
目先の利益重視的なこなす仕事よりも、都市や地域の魅力を発掘し、考えてアイデアを活かすことができる仕事へシフトしていきたいと思うこのごろです。(といいますか、日ごろから思っていること...大学時代から考えている構想は、まだまだ出来ていないので...。)