ランドスケープデザインの仕事
従来の考え方では、建築や土木の下に付随する一領域としての認識で、造園というくくりで表現されてしまっていました。
日本では造園といえば、建物に付随する庭園や箱庭など限られた閉じた空間での設計や施工のことを示されがちであります。
地域のグランドデザインをする仕事といえば、土木や都市計画であるという方もおりますが、土木は、土木構造物を用いて人間を中心とした人々の生活空間をつくること、都市計画といえばある法令や決まりに従い机上での分析、解析などを用いて面的にも形をつくる計画のこと(だけではありませんが...)になってしまいます。
現在においては、20年前ごろの考えと比べると、空間デザインやまちおこしなどの志向は入りつつもそれぞれの分野でその領域を主体に独立して考えられているので、まだまだ付属分野という考えが世の中から払拭されていません。
(業界内に働く、熟年世代や地方技術者では、従来のくくりでの考えで凝り固まってしまっている人が多い状況。またそれらを理解できる環境におくことも出来ない状況でもあり...。)
本来のランドスケープデザインというものは、自然や地域、風土のこと、建築、土木、都市計画のことなどをひっくるめて、グランドデザインの方向性を導き出すこと、人間だけでなく、自然の恵みの恩恵を考えながら都市や地域の文化を創出していくことが本来の姿であるように思います。
例えば、自分の通っていた東北芸術工科大学では
ある意味、都市計画や建築のこと、造園的なことを広く捉えた「環境デザイン」という分野を専攻し、いろんなことを頭脳だけでなく感覚的にも学び、地域の方々と交流しながら生活文化のことを含めて考えることをしましたが、そのことが21世紀型の「ランドスケープデザイン」という分野なのだと自分は理解しています。
実技的なことを学ぶ大学もありますが、自分のいた大学および研究室ではそれよりも地域の本質を肌で感じ、将来の活躍できる技術者を輩出するという目的があったのではと、今になってわかってきたような気がします。
従来の業務的な技術、仕事の方法については、社会で鍛えられますが、根本的に世の中の出来事に関心を示す、考えるということは、社会になってからでは組織の考えに染まってしまい、凝り固まった考えになってしまうのがオチです。
ひとり立ちしても恥ずかしくない、考えられる技術者、プランナー、デザイナーになりうる人材を多く世の中に輩出することを念頭においていたのではと思います。
ランドスケープデザインとは、箱庭や公園をつくるだけの仕事ではない。もちろん、従来の箱庭や公園を造っていくことにも寄与しなくてはならないのですが、ポイントの整備だけでなく、面的な建設技術のことだけでなくいろんな事象を重ね、トータルにプランニングするのがランドスケープデザイン、地域デザインというものなのではないでしょうか。
また、中央で働いている、地方で働いている、企業で働いている、大学で教鞭を執っている様々なランドスケープデザインにかかわっている人どうしが、お互い共通認識を持ってこの業界、この分野について本来の姿へ近づけられるよう、新しい息吹を世の中に吹き込んでいくことがこれからやっていかなくてはいけないことのひとつなのだろうと思います。